義足と義手のリハビリテーション

切断のリハビリテーション医療

2020-01-01から1年間の記事一覧

コンピュータ制御足部メリディウムについて

メリディウムはコンピュータで足関節の動きを制御してくれる足部です(細かく言うとMP関節も動きます)。 www.ottobock.co.jp 通常の義足の足部パーツは歩行時に足関節は動きません。 動いているように見えるのは、内部にあるカーボンファイバーのたわみ(し…

【義足処方例】大腿切断(超低活動:K1) 固定膝継手とキスキット懸垂

仮義足です。 大腿義足 高齢女性 超低活動(K1レベル) この方のリハビリテーションの目標は義足を活用して屋内歩行とADL自立を確立することでした。 gisokutogishu.hatenablog.com 懸垂方法はキスキット懸垂にしました。 健側下肢の筋力が弱いこと、ピン式…

股義足や大腿義足に有用なトーションアダプター

義足の欠点の一つに「ねじれの動き(内外旋の動き)」が再現できていないということがあります。 人間の身体では主に足関節や股関節がねじれの動きに対応してくれています。 義足の足部パーツではカーボンファイバーの素材がねじれの動きに少しは対応してく…

下腿義足のアライメント調整

下腿義足のアライメント 義足のアライメントには、義足のみを立たせてみた時のアライメント(ベンチアライメント)、患者さんが装着して立ってみた時のアライメント(スタティックアライメント)、歩いた時のアライメント(ダイナミックアライメント)の3パ…

義足ソケットの内転・外転、屈曲・伸展とは

ソケットの内転・外転と屈曲・伸展 ソケットの内転と外転という表現は非常に混乱しやすいです。どちら方向の調整が内転(外転)だっけ?となりやすいです。 内転と外転はそのソケットの中心線が基準線に対してどちら側を向いているかで決まります。 基準線に…

【用語】ミクリッツ線(Mikulicz line)とは 下肢機能軸とは

ミクリッツ線 股関節(大腿骨頭)中心と足関節中央を結ぶ線を下肢機能軸 (mechanical axisあるいはMikulicz line)と呼びます。荷重線とも言います。 これは整形外科で変形性膝関節症の変形の程度を評価する時に使う線です。 膝関節の中心が下肢機能軸(ミク…

【用語】MPTレベルとは

MPTレベル MPTを略さず書くとmid-patellar-tendonです。 つまり、MPTレベルとは膝蓋腱の真ん中、つまり膝蓋腱レベルのことを指します。 下腿義足ではよく出てくる用語なので義足に関わる義肢装具士、理学療法士、医師は覚えておいてください。

義足ソケットの中心線とは

義足ソケットの中心線 義足ソケットの中心線とはMPTレベルで内外径を二等分した点と、ソケット下3分の1レベルでの内外径を二等分した点を結んだ線のことを言います(義肢学第3版)。 この線はソケット毎に決まるものです。 筆者の病院では義肢装具士がソケッ…

義足ユーザーに適した靴とは 低活動義足ユーザーの場合

低活動義足患者に適した靴とは? 低活動の義足患者さんに適した靴は何かという話です。 最近試し始めたあゆみメディカルの靴が良かったので、今回は過去記事を新たに更新し、その靴のことを加えた内容にしました。 対象となる低活動下肢切断者は主に糖尿病や…

仮義足での膝継手パーツの選び方と考え方

膝継手パーツは各社からいろんなパーツが販売されており、選択肢が多すぎて何を選べばよいか分からない方も多いのではないかと思います。 試してみるといっても時間に限りがあります。 そこで、今回は活動レベル毎にここから選んでおけばだいたい間違いない…

能動義手の伝達効率

初めて能動義手を作るとき、能動仮義手のリハビリ(作業療法)をする時は、能動義手を装着して動かし始める前に、必ず伝達効率を測定するようにしましょう。 伝達効率とは何でしょうか? 伝達効率は装着者が能動義手に伝えた力がどれくらいの割合で手先具に…

下肢切断の入院患者数と切断原因

下肢切断の患者さんをどれくらい受け入れているかを公開します。 私が勤務している病院の場合です。病棟は一般的な回復期リハビリテーション病棟です。 すべて仮義足リハビリテーション(はじめての義足)のための入院です。 下肢切断の入院患者数 やはり多…

仮義足での足部パーツの選び方

仮義足リハの現場において足部はどのように選択すればいいでしょうか? 完成用部品に載っているすべての足部パーツの中から選びますか? それでは時間がいくらあっても足りません。 回復期リハ病院で行われる仮義足リハ入院では通常、入院期限があります。期…

仮義足リハにおけるシリコーンライナーの選択について

下腿切断のシリコーンライナー 当院では、下腿切断の仮義足リハで使うシリコーンライナーはある程度決まったものにしています。 基本的に、オズール社のデルモウェーブというライナーを処方するようにしています。 www.p-supply.co.jp デルモウェーブの特徴…

【義足処方例】下腿切断 K2レベル ピンロック懸垂

下腿義足 仮義足です。 男性 糖尿病合併 慢性腎不全で透析中 短断端 K2レベル*1 断端が短いと義足を装着して歩いた時に膝関節がグラグラと動揺しやすいです。一つの対策としてKBMっぽく側壁を高くしてソケットの拘束性を高める方法があります。これにより歩…

前腕能動義手(フック)の処方例

前腕能動義手(フック) 体格が大きな男性が使っている前腕能動義手(フック)です。 仮義手です。 当院では筋電義手を希望される方も、基本的に能動義手のリハビリは経験していただきます。 断端の長さは健側比39%でやや短めです。短いのでしっかり懸垂す…

前腕能動義手(ハンド)の処方例

前腕能動義手(ハンド) こちらは前腕切断の女性が使っている能動義手です。 仮義手です。 断端の長さは健側比68%と標準的な長さです。 断端の成熟がまだ激しい時期ですので、ソケットの懸垂力を確保するために顆上支持式ソケットにしました。 ハーネスは9…

下肢切断のリハビリテーション栄養

回復期リハビリテーション病棟でリハビリテーション治療を行うにあたり、十分な栄養をとることは大切です。 下肢切断者に限ったことではありませんが、ここでは下肢切断者のリハビリテーション栄養について考えていきます。 急性期病院から回復期リハビリテ…

前腕能動義手(フック)の処方例

前腕能動義手(フック) 70代男性の前腕能動義手です。 断端長70%(健側比)と長めです。 能動義手と筋電義手を併用されている方の能動義手です。どちらも使っていますが、仕事ではもっぱら能動義手を使っています。 機械の組み立てや塗装などの仕事をされ…

【まとめ】義足(下肢切断)のリハビリテーション

義足(下肢切断)のリハビリテーションについてまとめました。 リハビリテーション医学全体の中で切断はマイナーな分野です。対象となる患者さんが少なく、知識や経験が蓄積されにくいです。 私が経験してきたことや勉強してきたことをここに共有します。 切…

回復期リハビリ病棟退院後の義足ユーザーの外来フォローについて

今日は主に義肢装具士さん向けに記事を書きました。若いリハ医の先生方にも参考にしてもらえると嬉しいです。 外来フォロー 回復期の義足リハビリテーションが終了して退院したら、次は外来フォローです。 義足は一回作れば終わりというものではありません。…

低活動下肢切断者は退院時に介護保険制度を利用したほうがよい

これは主に高齢者、糖尿病、ASOを合併している低活動下肢切断者での話です。 低活動下肢切断者では退院後しばらくすると歩けなくなる、義足が装着できなくなることが少なくありません。 外来フォローも必要ですけど、それだけでは足りません。地域で見ていく…

断端に傷ができた時の対応で気を付けたほうがいいこと(2021年6月更新)

この記事は主に義足に関わるドクター、看護師、理学療法士、義肢装具士向けです。 断端にできた傷に何を貼るか 断端と義足のフィッティングはとても大切です。日々のフィッティング調整についてはこちらの記事を参考にしてください。 gisokutogishu.hatenabl…

義足のフィッティング(適合)調整について

今日の記事は義足に関わる理学療法士、医師、義肢装具士向けです。 できあがった義足のフィッティング(適合)調整でできることは以下の3点です。 断端袋で調整 ソケット内にパッドをあてて調整 熱を加えてソケットの形状を修正 1は、1番簡単にできることで…

【まとめ】義足の懸垂方法

義足(下腿義足と大腿義足)の懸垂方法についてまとめてみました。 臨床ではこの5つを覚えておきましょう。 ピンロック式(下腿義足、大腿義足) 吸着式(下腿義足、大腿義足) 差込式(下腿義足、大腿義足) キス懸垂(大腿義足) カフベルト懸垂(下腿義足…

【義足処方例】大腿切断 低活動(K2) 固定膝継手とキスキット

高齢男性 非血管原性 認知機能低下あり いろいろ検討した結果、固定膝継手を処方することになった症例です。高齢でしたが身体機能は保たれていました。しかし認知機能低下があることで膝継手は固定膝、懸垂方法はキスキットを選択することになりました。 大…

義足リハビリの入院期間(2021年1月更新)

義足の種類と構造 | Ottobock JP 今日は回復期の義足リハビリテーションの入院期間について書きます。転院前の面談で必ず私が患者さんにお伝えしていることです。 長いと感じるか短いと感じるかは人それぞれですが、だいたいこれくらいの期間がかかっていて…

切断者が義足を装着し続けるためには断端に傷を作らないようにすることが大切

義足を装着する上で最も重要なことは断端に傷を作らずに、義足を履き続けることだと私は思っています。 理学療法で義足を装着するための筋力を鍛えるのも、義足の自己管理方法を覚えるのも、義足と断端のフィッティングを合わせるのも、義足のアライメントを…

回復期の義足リハビリテーション

回復期の義足リハビリテーションでは何をするのか?目的は?についてまとめました。 目標とする移動能力の獲得 義足や断端の自己管理方法の習得 断端の成熟 退院後の生活確立、社会復帰への支援 回復期の義足リハビリテーションは、外来でもできなくはないで…

義足の自己管理②|断端の管理(2021年2月更新)

断端に傷はできていないか 断端に保湿剤は塗っているか 断端の汗はまめに拭いているか 断端袋でのフィッティングの調整はできているか 義足を装着し続ける上で最も大切なことは、断端に傷を作らずに義足を装着し続けることです。 断端に傷ができてその傷が深…