義足と義手のリハビリテーション

切断のリハビリテーション医療

前腕能動義手(フック)の処方例

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前腕能動義手(フック)

70代男性の前腕能動義手です。

断端長70%(健側比)と長めです。

能動義手と筋電義手を併用されている方の能動義手です。どちらも使っていますが、仕事ではもっぱら能動義手を使っています。

機械の組み立てや塗装などの仕事をされています。

仕事の内容によってまだまだ能動義手の活躍する場はあります。

写真の能動義手の解説をすると、その構成は

  • ソケットの形状:差込式
  • 懸垂方法:ハーネス+ピンロック式(シリコーンライナーはオズール社のアッパーXという上肢用のシリコーンライナー)
  • ハーネス:9の字ハーネス
  • 手先具:フック
  • 手継手:屈曲式(これは写真の見た目では分からないと思います)

となります。リハビリテーション科医や作業療法士はこれくらいが言えるようになるといいと思います。

義肢装具士はさらにケーブルハウジング、クロスバーアッセンブリ、ベースプレート、リテーナー、ターミナル、フック先ゴムなどがどの部分を指すか知っておかなければいけません。

このユーザーさんは能動義手も筋電義手もピンロック式の懸垂を併用しています。一つのシリコーンライナーで能動義手も筋電義手もはめられるように、シリコーンライナーに穴を開けています(この穴の位置に筋電義手の電極が当たるように作っています)。

ハーネスは9の字と8の字の2パターンがあります。可能ならより快適な(上腕カフがないため)9の字にしたいところですが、ソケットを断端にしっかり固定しなくてはいけませんので、それとの兼ね合いで決めなければいけません。

差込式ソケットとピンロック式懸垂にした場合 → 9の字ハーネスでOK

顆上支持式ソケットにした場合 → 9の字ハーネスでOK(断端が短すぎると8の字の方がいいかもしれない)

差込式ソケット → 8の字ハーネス(能動義手操作時にソケットが回転してしまうので)

顆上支持式ソケットは懸垂力は強い(安定性が高い)ですが、肘周りが拘束されてしまって窮屈なのが欠点です。できるなら差込式ソケットにしてあげたいところです(安定性を好むユーザーさんであれば顆上支持式でもいいと思います)。

差込式ソケットでもピンロック式の懸垂を併用していれば、9の字ハーネスで十分な懸垂が可能です。

シリコーンライナーは断端が長すぎても短すぎても適応にならないので注意が必要です。シリコーンライナーの装着を面倒と感じる人もいるので、メリットとデメリットを天秤にかけて採用するかどうか決めるといいと思います。