義足と義手のリハビリテーション

切断のリハビリテーション医療

【義足処方例】大腿切断 低活動(K2) 固定膝継手とキスキット

  • 高齢男性
  • 非血管原性
  • 認知機能低下あり

いろいろ検討した結果、固定膝継手を処方することになった症例です。高齢でしたが身体機能は保たれていました。しかし認知機能低下があることで膝継手は固定膝、懸垂方法はキスキットを選択することになりました。

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大腿義足|キスキット懸垂、固定膝継手3R41

義足の処方内容

  • ソケットの形状:四辺形ソケット

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義肢/義足 | 幸和義肢研究所 https://www.kowagishi.com/2018/06/05/post-1481/
  • 懸垂方法:キスキット

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    キスキットは低活動者に適した懸垂方法です。ピンロック式懸垂は高齢低活動では難しい場合も多いので、キスキットも選択肢の中に入れておくといいです。本症例は、認知機能が低下していたためと思われますがキャッチピンの取り扱い方法が定着せず(ライナー装着時にピンをいつも同じ向きに持ってくることができない)、キスキットを選択することになりました。
  • ターンテーブル(オットーボック)

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    靴を履いたりする時に使います。屋内では靴を脱ぐ文化のある日本ではできるだけ入れたほうがいいパーツです。

  • 足部:アシュア(オズール)

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    アシュアは低活動から中活動の切断者に適した足部パーツです。私がよく処方する足部パーツの一つです。
  • 膝継手:固定膝継手3R41(オットーボック)
    膝継手について解説します。
    本症例は、膝継手は3R106で開始し、その後トータルニー(TK2000)でしばらく(計約2ヶ月)歩行訓練をしました。

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    3R106は価格と機能、両方を考慮するとバランスのとれた膝継手のため、当院ではまずはこの膝継手を試すようにしています。

    もう少し膝継手に安定性が欲しい人で、経済的に余裕のある方は次にトータルニーを試します。

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    しかし、本症例では膝折れのリスクが取り切れず、高齢であったこともあり、より安全な膝継手を選択することとしました。

    そこで試したのがコンピュータ制御の膝継手Kenevoです。

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    Kenevoは膝折れのリスクを減らしてくれてよかったのですが、完全に膝折れしなくなったわけではないので、ご本人としては値段(膝継手だけで200万円ちょっと)に見合ったメリットを見出すことができず、最終的に固定膝継手にすることになりました。

    Kenevoはまっすぐ歩いている時はほぼ問題ありませんでしたが、歩幅を小さくして方向転換するときなどに足が地面に引っかかってしまい、膝折れしてあやうく転倒しそうになる場面がありました。

    本症例は認知機能の低下があり、新しいことが覚えるのが苦手という症状がありました。Kenevoに適応できなかったのはその影響も少なからずあったと考えています。

    高齢な方は転倒すると骨折など大怪我につながるリスクが高いため、転びながら使い方を覚えるというわけにはいきません。そのため、最終的に処方した固定膝継手はオットーボックの3R41(http://www.p.ottobock.jp/pdf/cat_3r41.pdf)になりました。

    当院では固定膝継手の第一選択は3R41にしています。膝継手を固定にする時(伸展した状態に固定する時)にカチッと音がするところがいいです。高齢者はカチッという音や振動できちんとロックされたことを確認します。周りの人も音で固定されたことを確認できます。きちんと膝継手がロックされない状態で立ち上がろうとすると、膝折れして転倒してしまい大惨事になります。

    最終的に膝継手が固定になることは決して悪いことではありません。もちろん歩いたときの見た目は遊動膝継手に劣りますが、固定膝でも杖をついて屋外を歩くことはできますし、日常生活のADLで義足を活用することも可能です。

大切なのは安全に歩き続けることです。そのため高齢低活動の大腿切断者では固定膝継手やキスキットといった選択をオススメします。