義足と義手のリハビリテーション

切断のリハビリテーション医療

高活動者向け大腿義足処方例と大腿義足ソケットの処方方針

最近の大腿義足の処方例です。 切断原因は労災事故による外傷です。 仮義足(訓練用仮義足)になります。 K4レベルの患者さんだったため、処方内容は高活動者向けの構成になっています。 ソケットの形状:IRC 懸垂方法:ピンロック シリコーンライナー:義足…

修正キス懸垂

大腿義足の懸垂方法の一つであるキス懸垂について解説します。 キス懸垂は懸垂方法の形式としてはピンロック式と同じ遠位固定型に分類されます。 キスはKeep it simple suspensionの頭文字を取ったものです KISS-Suspension KISS-Suspension prosthetic limb…

大腿義足のターンテーブル

ターンテーブル 大腿義足にはターンテーブルというパーツを入れることが多いです。英語ではlocking positional rotatorと言います。 ターンテーブルは右の写真のように義足の下腿を180度回転させて上下逆さまにできるパーツです。 これがあると靴を脱ぎ履き…

パラ陸上のT63クラス(大腿切断含む)では膝離断の選手が有利

大腿義足の人がパラリンピックに出る場合、クラス分けでT63に分類されます。 このT63というクラスは大腿切断の他に、膝離断や股離断の選手も含まれます。 https://jaafd.org/pdf/top/classwake_qa_rr.pdf パラスポーツのクラス分けはどこかで線引きしないと…

足関節・足部における「外がえしと内がえし」および「回外と回内」の定義

日本整形外科学会、日本リハビリテーション医学会、日本足の外科学会の3学会によるワーキンググループから、足関節・足部における「外がえしと内がえし」および「回外と回内」の定義が発表されました。2022年4月1日から正式に発効となる予定です。 外がえし…

【用語】主「動」筋なのか主「働」筋なのか

筋肉はその働きから2種類に分けられます。 主動筋 主動作筋(しゅどうさきん)とは、筋肉運動の際に主となる筋肉のことである。主動筋(しゅどうきん)、主力筋(しゅりょくきん)、アゴニスト(英agonist)と呼ばれる。 主動作筋 - Wikipedia 拮抗筋 拮抗筋…

切断術後の断端末にできる水疱の原因と対処法

義足ユーザーの断端の末端に水疱ができるトラブルは割とよくありますが、その原因のほとんどは ライナー(シリコーンライナー)が正しく履けてない 体重が増えたことでライナーがきつくなった です。 水疱ができたら原因を取り除き、治るまでは無理をしない…

義足リハの難易度とどこでリハビリするかについて

下腿義足 < 大腿義足 < 両下腿義足 < 股義足 << 両大腿義足 *1 私見ですが、このように考えています。どの切断レベルも主治医としてリハビリテーション入院を担当したことがあった上での見解です。 難易度ごとにどのようなリハ施設でリハビリをやった方がい…

若手リハ医の義肢装具勉強法 見積もりの活用

病院で勤務しているリハ医は少なからず義肢装具を処方する機会があると思います。 義肢でも装具でもどちらでもいいのですが、病院で義肢装具を処方する場合、医師がオーダーし、義肢装具士が採型や採寸をし、その上で義肢装具士が患者さんに現物を納めている…

仮義足のリハビリでは義足にスライドアダプターを組み込むことをおすすめします

仮義足リハの現場では理学療法士が義足のアライメント調整をしなければならないことも多いと思います。 アライメントは角度だけで全て調整しようとすると難しい(特に苦手な人はここで挫折します)ので、スライドアダプターを活用した方がいいです。 義肢装…

シリコーンライナーの手入れ 使用する石鹸について

シリコーンライナーは毎日洗いましょう。 毎日洗うのは皮膚に接するツルツルの面です。 皆さん下着は毎日洗いますよね?それと一緒です。 汚れをきちんと落とすために石鹸を使って洗います。 石鹸はオズール社は弱酸性を、オットーボック社は中性のものを推…

下腿義足ソケットの分類

下腿義足ソケットの種類についてまとめました。 下腿義足のソケットは、体重支持方法で分類するか、懸垂方法で分類するか、分けて考えるとよいです。この二つをごっちゃにして考えると頭の中が混乱します。 そしてこの体重支持方法と懸垂方法はお互い重なり…

仮義足で吸着式ソケットは避けた方が無難

吸着式は断端と義足の一体化を考える上で一番理想的な懸垂方法です。 大腿義足であっても下腿義足であってもそうです。 しかし、仮義足でこの懸垂方法はおすすめしません。 なぜなら仮義足の時期は断端の大きさが刻一刻と変わる(成熟する)からです。 吸着…

高齢者の大腿義足に吸着式ソケットが適さない理由

吸着式は断端と義足の一体感が他の懸垂方法より優れているので、うまくいけばこの懸垂方法がいちばんいいです。 吸着式のソケットは図のようにバルブが付いているのが特徴です。ここから空気が排出されて断端とソケットが一体化する仕組みになっています。 …

【用語】腰バンド、吊り帯(吊帯)、シレジアバンド

義足の懸垂用部品の名称について。厚生労働省の資料*1より。 今はパーツの進歩もあり、あまり使われなくなった部品です。 臨床ではめったにお目にかかることはないと思いますが、リハ科医師は知っておいた方がいいかと思います。 先日、91歳の下腿切断(義足…

義足パーツはユーザーのためにダウングレードが必要なことがある

超低活動(K1レベル)の大腿切断かつ下腿切断者の義足です。 もともと左下腿切断のみだったのですが、今回、病期の進行により反対側の足が大腿切断となりました。 全身の身体機能低下が著しく、介助で立位をとらせられれば上出来というレベルでした。糖尿病…

【義足処方例】下腿切断 K2レベル カフベルト懸垂

70代女性 糖尿病 ASO(閉塞性動脈硬化症) 活動レベル:K2 入院期間約3ヶ月でした。 最終歩行形態はT杖歩行です。遠くまで歩いて出かけるのは難しい方でした。自宅内はつたい歩きが現実的でした。 介護保険を導入し、自宅退院となりました。 処方した義足(…

仮義足リハにおけるシリコーンライナーの選択

私が仮義足(訓練用仮義足)でよく処方している下腿義足のシリコーンライナーを紹介します。 患者さんの状態に合わせて上の4つから選択することが多いです。 切断したての断端にはやわらかいライナーや膝を曲げやすいシリコーンライナーの方が断端に優しくて…

低活動者用の下腿義足処方例:カフベルト懸垂とクッションライナー

低活動者用の下腿義足。仮義足の処方例です。 合併症に 糖尿病 閉塞性動脈硬化症 慢性腎不全で透析 があります。 処方内容は カフベルト懸垂 クッションライナー 足部:Jフット です。 ポイントはカフベルト懸垂とクッションライナーを選択していることです…

義足リハにおけるレントゲン検査の活用法

義足リハにおけるレントゲン検査の活用方法を紹介します。 断端のレントゲンではなく、義足を装着した状態でのレントゲンです。 今回は下腿義足の場合です。 下腿義足を装着した状態でレントゲンを撮ると分かることが2つあります。 アライメント 一つはアラ…

両下肢切断者が仮義足リハ入院中に、もう片方の本義足作り直しが必要になった時、どのように対応したかという話

タイトル分かりにくくてすみません。 以下のような状況を想像してみてください。 もともと大腿義足の仮義足を1年前に作りました。 それから1年経って今度は左下腿切断術を受けることになり、両下肢切断の状態となりました。 新たに下腿義足が必要になり、下…

超低活動の両下肢切断に適した足部とは?

今日のテーマは超低活動者*1の両下肢切断の場合、どのような足部が適切なのかというものです。 超低活動者は糖尿病やASO(閉塞性動脈硬化症)を合併していてなおかつ高齢であるという不利な条件が揃っていることが多いです。 両下腿切断ならまだしも、右は大…

コンピュータ制御膝継ぎ手のイールディング機構

youtu.be コンピュータ制御膝継手ジニウムのイールディング機構が膝折れを防いでくれている様子です。 イールディングが効いてジワッと曲がるため、右足を付く時間があり、膝折れを防いでくれています。 この動きができることが義足の膝継ぎ手にとってとても…

義足に関わる医療従事者が義足パーツとうまく付き合うためにはどうすればいいか

義肢パーツには本当にたくさんの種類があります。 時間には限りがあるためすべてのパーツを試すことはできません。 いくらパーツに詳しい人でもすべてを知り尽くしている人はいないと思います。その必要もないように思います。 ではどのように考えて患者さん…

RPNIは切断術後の幻肢痛も予防するかもしれない(Kubiak CAら, Plast Reconstr Surg. 2019)

この研究では、断端神経腫による痛みを予防し、幻肢痛を軽減するためのRPNIの可能性を検討している。 Methods 予防的RPNIの有無にかかわらず四肢切断を受けた患者を対象とした。患者の特徴、切断レベル、術後合併症を確認するために後方視的調査を実施し、神…

断端神経腫による痛みにRPNIが有効(Shoshana L. Wooら, Plast Reconstr Surg Glob Open. 2016)

RPNI(Regenerative Peripheral Nerve Interface)の手技(Fig. 1)。3×1×1.5cm程度の筋肉の遊離グラフトを神経の近傍もしくは離れたところから取ってきて神経を包む。総腓骨神経や坐骨神経などの太い神経は2つもしくは3つのfascicleに分けてRPNIをする(Fig.…

断端神経腫による痛み治療のための手術手技RPNI(Regenerative Peripheral Nerve Interface)

切断術後の神経腫による痛みは50%〜80%に生じていると言われているが、有効な治療法はない。著者らは神経腫の治療としてRegenerative peripheral nerve interface(RPNI)と呼ばれる外科治療を開発した。この手技はもともと筋電義手のコントロールのために…

Genium(ジニウム)のイールディング機構は膝折れによる転倒を防ぐ

コンピュータ制御膝継手Geniumジニウムのイールディング機構が膝折れを防いでくれている様子です。 youtu.be 何がすごいのか分かりづらいかもしれませんね。 イールディングが効いて膝がジワッと曲がるために、反対側の右足を付く時間があり、膝折れによる転…

義足ユーザーの体重管理

あいかわらず義足ユーザーの体重管理は義足を快適に履き続けるために大切だなあと思うことが多いので記事にしておきたいと思います。 義足ユーザーの断端は体重の影響を大きく受けます。 体重が増えれば断端は大きくなるし、体重が減れば断端は小さくなりま…

【下腿義足】RAを合併した高齢者の下腿義足

関節リウマチ(RA)、糖尿病、ASOを合併した高齢患者さんの下腿義足の処方例です。 活動レベル*1はK1で超低活動です。 回復期リハ病棟入院までに要した期間も長く、廃用が著しく進んでいました。 RAによる健側下肢の関節変形もリハビリのネックとなっていま…