義足と義手のリハビリテーション

切断のリハビリテーション医療

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

義肢(義足・義手)の分野が発展しにくい理由

義肢(義足・義手)の歴史は古く、それこそ紀元前から義足は使われてきました。*1*2 それなのに、義肢医療の分野はそこまで進歩していません。 昔は足に大きな怪我を負ったり、感染症を発症したりしたら、足を切らざるを得ませんでした。 近年の医学の進歩に…

【用語】球根状の断端(先端が太い断端の呼び方)

切断直後の断端は腫れていることが多いです。下の図でいうと、左の状態です。 下腿切断の断端(https://www.physio-pedia.com/Pre-Fitting_Management_of_the_Patient_with_a_Lower_Limb_Amputation) この形状のことを何と呼ぶか? 正しくは球根状と言いま…

両側大腿切断のスタビーとコンピュータ制御膝継手

義足リハビリテーションの難易度は 下腿切断<大腿切断<<両側大腿切断 という感じで両側大腿切断の難易度はかなり高いです。 ただでさえ大腿切断は難しいのに、両側になるとその難しさは倍以上です。 リハビリの進め方にも特殊な戦略が求められます。 Yout…

コンピュータ制御足部メリディウムについて

メリディウムはコンピュータで足関節の動きを制御してくれる足部です(細かく言うとMP関節も動きます)。 www.ottobock.co.jp 通常の義足の足部パーツは歩行時に足関節は動きません。 動いているように見えるのは、内部にあるカーボンファイバーのたわみ(し…

【義足処方例】大腿切断(超低活動:K1) 固定膝継手とキスキット懸垂

仮義足です。 大腿義足 高齢女性 超低活動(K1レベル) この方のリハビリテーションの目標は義足を活用して屋内歩行とADL自立を確立することでした。 gisokutogishu.hatenablog.com 懸垂方法はキスキット懸垂にしました。 健側下肢の筋力が弱いこと、ピン式…

股義足や大腿義足に有用なトーションアダプター

義足の欠点の一つに「ねじれの動き(内外旋の動き)」が再現できていないということがあります。 人間の身体では主に足関節や股関節がねじれの動きに対応してくれています。 義足の足部パーツではカーボンファイバーの素材がねじれの動きに少しは対応してく…

下腿義足のアライメント調整

下腿義足のアライメント 義足のアライメントには、義足のみを立たせてみた時のアライメント(ベンチアライメント)、患者さんが装着して立ってみた時のアライメント(スタティックアライメント)、歩いた時のアライメント(ダイナミックアライメント)の3パ…

義足ソケットの内転・外転、屈曲・伸展とは

ソケットの内転・外転と屈曲・伸展 ソケットの内転と外転という表現は非常に混乱しやすいです。どちら方向の調整が内転(外転)だっけ?となりやすいです。 内転と外転はそのソケットの中心線が基準線に対してどちら側を向いているかで決まります。 基準線に…

【用語】ミクリッツ線(Mikulicz line)とは 下肢機能軸とは

ミクリッツ線 股関節(大腿骨頭)中心と足関節中央を結ぶ線を下肢機能軸 (mechanical axisあるいはMikulicz line)と呼びます。荷重線とも言います。 これは整形外科で変形性膝関節症の変形の程度を評価する時に使う線です。 膝関節の中心が下肢機能軸(ミク…

【用語】MPTレベルとは

MPTレベル MPTを略さず書くとmid-patellar-tendonです。 つまり、MPTレベルとは膝蓋腱の真ん中、つまり膝蓋腱レベルのことを指します。 下腿義足ではよく出てくる用語なので義足に関わる義肢装具士、理学療法士、医師は覚えておいてください。

義足ソケットの中心線とは

義足ソケットの中心線 義足ソケットの中心線とはMPTレベルで内外径を二等分した点と、ソケット下3分の1レベルでの内外径を二等分した点を結んだ線のことを言います(義肢学第3版)。 この線はソケット毎に決まるものです。 筆者の病院では義肢装具士がソケッ…

義足ユーザーに適した靴とは 低活動義足ユーザーの場合

低活動義足患者に適した靴とは? 低活動の義足患者さんに適した靴は何かという話です。 最近試し始めたあゆみメディカルの靴が良かったので、今回は過去記事を新たに更新し、その靴のことを加えた内容にしました。 対象となる低活動下肢切断者は主に糖尿病や…

仮義足での膝継手パーツの選び方と考え方

膝継手パーツは各社からいろんなパーツが販売されており、選択肢が多すぎて何を選べばよいか分からない方も多いのではないかと思います。 試してみるといっても時間に限りがあります。 そこで、今回は活動レベル毎にここから選んでおけばだいたい間違いない…

能動義手の伝達効率

初めて能動義手を作るとき、能動仮義手のリハビリ(作業療法)をする時は、能動義手を装着して動かし始める前に、必ず伝達効率を測定するようにしましょう。 伝達効率とは何でしょうか? 伝達効率は装着者が能動義手に伝えた力がどれくらいの割合で手先具に…

下肢切断の入院患者数と切断原因

下肢切断の患者さんをどれくらい受け入れているかを公開します。 私が勤務している病院の場合です。病棟は一般的な回復期リハビリテーション病棟です。 すべて仮義足リハビリテーション(はじめての義足)のための入院です。 下肢切断の入院患者数 やはり多…

仮義足での足部パーツの選び方

仮義足リハの現場において足部はどのように選択すればいいでしょうか? 完成用部品に載っているすべての足部パーツの中から選びますか? それでは時間がいくらあっても足りません。 回復期リハ病院で行われる仮義足リハ入院では通常、入院期限があります。期…

仮義足リハにおけるシリコーンライナーの選択について

下腿切断のシリコーンライナー 当院では、下腿切断の仮義足リハで使うシリコーンライナーはある程度決まったものにしています。 基本的に、オズール社のデルモウェーブというライナーを処方するようにしています。 www.p-supply.co.jp デルモウェーブの特徴…