義足と義手のリハビリテーション

切断のリハビリテーション医療

【切断術】下腿切断における義足に適した切断レベル(部位)

下腿切断の切断部位について。どのレベルで切断するのが理想なのか義足のリハビリを担当する医師の立場で書きたいと思います。

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下腿切断の切断レベル

※ 上の図は骨の切断レベルです。これに軟部組織の分を加えると、実際にはこれより長い断端になるのでご注意ください。

長い断端の方が残った筋力や、ソケットとの接触面積が大きいという点では有利です。だから切断術後の断端は原則できるだけ長く残す、でいいのですが、長すぎる断端は義足を履く上で困ったことが起きるのでご注意ください。

断端が長すぎると、下の写真のような高機能な義足パーツが入らず、パーツの選択肢が少なくなってしまいます。

http://www.p-supply.co.jp/ossur/catalog/flexfoot/original/upc0024.html

↑これなんかも非常に優れた足部ですが、ご覧のように背が高いので、断端が長すぎると使うことができません。

そのため下腿切断術を行うなら下腿の近位1/3レベルから中央1/2レベルの範囲でできるだけ長く切断するのが理想です。

切断術を行うような状況は外傷や感染など原因はさまざまで、皮膚の状態も良くないことが多いと思います。切断術は断端の傷が治癒するレベルで実施しなければならないため、必ずしも理想的な高さで切断できるわけではありません。

短くせざるを得ない場合もあります。その場合でも大腿切断よりできるだけ下腿切断の方がいいです。大腿切断と下腿切断では機能的な差が大きいからです。

どこまでの短さなら下腿切断でいけるかということですが、脛骨粗面を残せるなら下腿切断にした方がいいです。

なぜ脛骨粗面かというと、脛骨粗面には膝関節を屈曲伸展させる膝蓋腱が付着しているからです。

脛骨粗面より手前で切断して膝の曲げ伸ばしができない断端、つまり膝が動かない断端になってしまっては、残念ながらあまり下腿切断の意味がありません。むしろ残った断端が邪魔になってしまうのでご注意いただければと思います。

 

この記事が多くの整形外科や形成外科の先生の目に留まることを願っています。