サイム切断とは
サイム切断とは足関節レベルでの切断のことです。
断端が長くて先太りなのが特徴です。
まず、以下が教科書で述べられているサイム切断のメリットとデメリットです。
私が個人的にそうだなと同意する内容に○、それは違うかもと反対する内容に×をつけました。
その後に私が考えるサイム切断のデメリットを2点ほど付け加えました。
サイム切断のメリット
断端長が長いため、てこの作用により正常に近い歩行能力をもつ→×
これはどうなのかな?と思います。
義足を装着しない状態で下腿切断と比較したらたしかにそうかもしれません。
しかし、義足を装着した状態であれば、より高機能な足部パーツを入れられる下腿義足のほうが歩行能力の面では有利です。
断端末端部が膨隆しているためソケットの懸垂が容易である→×
確かに先が膨隆した断端は自己懸垂性を高めるかもしれません。
しかし、有窓式にしなければならず、デメリットの方が大きいと思います。
断端の状態が安定している→×
これはそんなことないです。
サイム切断の断端も下腿切断の断端と同様、断端は成熟して痩せます。断端の形状は変わっていきます。
断端に荷重性がある→○
これはたしかにメリットだと思います。
靴を脱いで自宅の中を歩く時、義足を履かなくても裸足で歩くことができます。
温泉に行ったときに裸足で洗い場を歩くことができます。
しかし、高齢であったり、糖尿病を合併したりしていると荷重できる面積が少ないサイム切断の断端ではうまく荷重をかけられませんのでご注意ください。
というわけで、断端荷重ができること以外のメリットは、、、あまりありません。
サイム切断のデメリット
断端末端部の膨隆のために外観が不良である(特に女性には禁忌)→○
これは義足を装着した状態であればそうだと思います。
ただし、女性だから禁忌というのはどうなんでしょう。男性だって見た目を気にする人は気にします。
サイム義足は足首が太い若干ブサイクな義足になります。下腿義足の方が外装(カバー)を付けることで自然な足に見えます。
断端末端部の膨隆のために義足の装着方法と適合を得ることが困難である→○
その通りです。
そのため有窓式といってソケットに窓を作らなければいけません。
上記に追加したい私が考えるサイム切断のデメリットは以下の2点です。
選択できる足部パーツが限られる
サイム切断では義足パーツを入れるスペースが限られます。
断端が長い分、たとえば以下のような機能性の高い義足パーツが入りません。
http://www.p.ottobock.jp/pdf/gisoku1.pdf
かわりに入るのはサイム用の以下のようなサイム専用の足部パーツです。
殻構造で作らなければいけないのは不利
サイム義足は殻構造の義足です。通常の下腿義足は骨格構造です。
殻構造の義足はネジを回してのアライメント調整ができません。
また、サイム義足はライナーを使わないのでチェックソケットで仮合わせをすることができません。アライメントやフィッティングの仮合わせができず一発勝負になります。
義肢装具士さんにとってはなかなかのプレッシャーです。
後々、微調整ができないのもデメリットです。
糖尿病足壊疽のサイム切断はやめた方がいい
糖尿病足壊疽の方は、サイム切断にはしないほうがいいです。
なぜなら狭い面積の断端に荷重をかけることになるので、その部分に傷を作りやすいからです。
感覚障害を合併しているので、荷重できる面積が少ないサイム切断の断端ではバランスよく荷重をかけられないということもあります。
いったん傷ができると治りにくいのが糖尿病足の特徴です。感覚障害も合併していて不利な条件が重なっています。感染してそれが悪化するとまた命を脅かす大変なことになります。
結論
サイム切断か下腿切断か選べる状態だったとして、現代の義足であれば、しっかり歩けて活動的になるためにはサイム切断より下腿切断の方がいいと思います。
下腿の1/2から近位1/3までの範囲で切断して、高機能な足部パーツを入れるのが理想です。
注)小児ではまだサイム切断が行われています。骨の発育を促す意味でサイム切断にするのはありかもしれません。成人してからより高活動になるために下腿切断術を受けるという手もあります。
文献紹介
サイム切断の論文36編のレビュー。小児238人、成人818人、トータル1056人が対象となった。小児では潰瘍もしくは感染は129人中6人(5%)、再切断は一人もなし。成人では919成人中180人(20%)が再切断となっている。血管原性切断の場合、潰瘍、感染、創離開が317人中85人(27%)で生じている。
Braaksma R, Dijkstra PU, Geertzen JHB. Syme Amputation: A Systematic Review. Foot Ankle Int. 2018;39(3):284-291. doi:10.1177/1071100717745313