義足と義手のリハビリテーション

切断のリハビリテーション医療

パラ陸上のT63クラス(大腿切断含む)では膝離断の選手が有利

大腿義足の人がパラリンピックに出る場合、クラス分けでT63に分類されます。

このT63というクラスは大腿切断の他に、膝離断や股離断の選手も含まれます。

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https://jaafd.org/pdf/top/classwake_qa_rr.pdf

パラスポーツのクラス分けはどこかで線引きしないといけないのでそう単純な話ではないのですが、膝離断と大腿切断と股離断が一緒にされているのには違和感を感じます。

股離断は圧倒的に走るのに不利ですし、膝離断と大腿切断を比べると膝離断の方が有利です。

現に先日の東京2020パラリンピックのT63クラス100m女子では膝離断の選手が上位を独占していました。

 
 
 
 
 
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膝離断がなぜ大腿切断より有利か解説すると、

  1. 断端末で荷重できるため、ソケットを深くしなくて済む(坐骨を収納しなくて済む)。上の写真のようにソケットの上縁が股にかからないので、股関節周りがスッキリして走りやすいです。
  2. 断端末で荷重できた方が義足に力を伝えやすいです。
  3. 断端と接するソケットの面積が広いので、断端とソケットが適合しやすいこともあると思います。

以上の点から走ることに関しては膝離断の方が大腿切断より有利と考えられます。

このクラス分けルールが続く限り、各国はT63で勝つために膝離断の選手を積極的にリクルートするんじゃないでしょうか(推測です)。

男子T63の山本篤選手は大腿切断なのにあれだけの成績を残せていて本当にすごいと思います。

ちなみに糖尿病やASOといった血管原性の切断で膝離断がいいかどうかは議論の余地があると思います。

そもそもその術式で傷が閉じるのかということや、膝の高さが左右でアンバランスになることのデメリットもあるからです。