義足と義手のリハビリテーション

切断のリハビリテーション医療

【義足処方例】両下肢切断(大腿切断と下腿切断)K1レベル(超低活動)

義足処方例シリーズです。

今回は低活動両下肢切断(大腿切断と下腿切断)用の義足についての解説です。

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あくまで一例です。これだけが正解というわけではありません。

血管原性の切断です。もともと右大腿切断でしたが、しばらくして病状の悪化により左下腿切断になられました。

下腿義足について

皮膚の脆弱性があったため、シリコーンライナーはコポリマーライナーを選択しています。

懸垂方法は血管原性かつ低活動向きのPTBカフベルト懸垂です。

足部は低活動者向け1C11テリオンソフトを選択しています。

大腿義足について

キャストソケットとチェックソケットの間は四辺形ソケットでしたが、座位時間が長いことを考慮して最終的な仮義足ではIRCソケットに変更しています。

懸垂方法は低活動者に向いているキスキットにしています。

膝継手はこのような両側切断症例で低活動な場合はシッティングアシスト付き固定膝継手がいいですね。油圧の抵抗を利用してゆっくり座れる機能は重宝します。

今回は片方が仮義足でもう片方が手帳を使っての本義足だったため行政とのやりとりに苦労しました。判定に行けない旨やソケット交換だけでなく新規で丸ごと一本ではダメなのか等々、自治体の方と電話でやりとりしました。

 

両下肢切断の場合、義足長(身長)の設定はとても大事です。元の身長の−5cmくらいにするのがよいと思っています。身長が高いとバランスをとりづらくなるからです。椅子からの立ち上がりを考慮した下腿長の設定にしてあげるのも大事なことです。

それから靴ですが、今回のような症例には屋内と屋外で同じ靴を用意してもらったほうがいいです。超低活動な方になると靴を変えたことで起きる微妙なアライメント変化に対応できず転倒につながってしまいますので。

 

両下肢切断で低活動で義足の適応なしと判断されることもあろうかという症例ですが、このような方々にも義足が提供されるといいなと思います。

実際の生活では自宅の中を義足を装着して歩行器を使って歩く、トイレに行く、食事の準備をする等がこの方ができるようになったことです(限定された場面での歩行)。屋外の移動は車いすです。

少しでも歩けるというのは人としての尊厳を保つ意味でも重要なことだと思います。そこをできるだけサポートしてあげたいというのが義肢好きリハ医としての気持ちです。

左右どちらの義足も私が処方、支給に関わったものです。いつもそうですが、今回の義足も私と志を同じくする義肢装具士さんに作ってもらっています。