超低活動(K1レベル)の大腿切断かつ下腿切断者の義足です。
もともと左下腿切断のみだったのですが、今回、病期の進行により反対側の足が大腿切断となりました。
全身の身体機能低下が著しく、介助で立位をとらせられれば上出来というレベルでした。糖尿病の持病がありました。
右大腿義足(仮義足)はシリコーンライナーを使用し、キスキット懸垂にして、膝継手は3R31シッティングアシスト付固定膝を選択しています。
足部は1D10ダイナミックフットです。ダイナミックフットはSACH構造の足部です。これを選択した理由は足下を少しでも安定させるためです。
超低活動の両下肢切断の場合、両足でバランスを取ることが難しいので、足下がグラグラするエネルギー蓄積型足部は避けたほうがいいです。
「歩く」というより「立つ」を重視するということです。がっしり安定性がある足部にしましょう。
今回はこれが本題ではありません。
もう片方の本義足の話がメインです。
左下腿義足はだいぶ前(約4年)に作ったものだったので、入院中に役所に作り直しの申請をしました。
古い下腿義足の足部はアジャストというエネルギー蓄積型足部だったため(当時は片側の下腿切断でしたから)、これを機に右と同様、安定性重視で1D10ダイナミックフットにダウングレードすることにしました。
ところが、更生相談所からの返答はノーでした。まだ使えるからアジャストを使い続けてくださいとのことでした。
患者さんが安全に立位を取るために必要だ、身体機能が低下したためそれに合わせた足部が必要だ、といくら説明しても埒が明かず、泣く泣くソケット交換だけ認めてもらうことになりました。
また、当初カフベルト懸垂にして義足の自己装着自立を目指していましたが、リハビリをやる中で患者さんの身体機能的にそれも難しいことが分かったため、家族に義足を履かせてもらうことに方針転換しました。
それに伴い懸垂方法はピンロック懸垂にしました。ピンロック懸垂にはソケットの側壁を高くできて側方安定性を高められるというメリットがあります。
当初作り直しの許可をもらっていたソケット交換ではカフベルト懸垂にする予定だったため、作る物の方針が変わるとまた更生相談所に行かなくてはいけないと更生相談所から言われました。
現在病院では不要不急の外出は避けなければいけないことになっていますので、結局チェックソケットのまま退院し、退院後に更生相談所に行くことになりました。
このユーザーさんのように入院中に仮義足を作りながら、本義足の作り直しをする必要がある場合、役所や更生相談所とのやりとりで患者さんや医療従事者が困ることは多々あります。
超低活動者の場合、そうでない切断者と違った観点で考えなければいけないことがあります。今回の下腿義足の足部変更がそうです。
超低活動者が義足を履くというのは一昔前ではあまり考えられなかったかもしれません。しかし、最近ではこのようなケースが増えています。
更生相談所も含め義足に関わる多くの人に、身体機能や活動レベルに応じたパーツ変更がその時その時で必要になると伝えていく必要があると感じました。