回復期リハビリテーション病棟でリハビリテーション治療を行うにあたり、十分な栄養をとることは大切です。
下肢切断者に限ったことではありませんが、ここでは下肢切断者のリハビリテーション栄養について考えていきます。
急性期病院から回復期リハビリテーション病棟に転院してくる患者さんたちは少なめの食事量(カロリー)で転院されてくることが多いです。ストレス係数はかかるものの、手術を受けたばかりでリハビリの時間が短く、活動量が少ないためと思われます。
そのままの食事を回復期リハビリテーション病棟でも続けていると、患者さんはだんだん痩せていきます。
痩せすぎは義足で歩くための筋力や体力をつけるのに不利なだけでなく、断端が痩せてしまうことでソケットが合わなくなる原因にもなります。
私が回復期リハビリテーション病棟で患者さんを診る時に、必要カロリーをどのように計算しているかを紹介します。
下肢切断者の場合、他の疾患と違った特殊性があります。下肢の一部が欠損している点です。
まず、切断後の体重をどう考えたらいいかですが、私はざっくり下腿切断なら−4.5%、大腿切断なら−13%と考えて計算しています。
The A.S.P.E.N. Nutritional Support Practice Manual. ASPEN. U.S.A. 1998
総論 身体計測の方法 より引用
身体部位別の%体重についてはもっと確かな文献がありましたらどなたか教えてください。
切断術後の残った足の長さは人により異なるのですが、そこを考え出すときりがないので、あくまでざっくり計算するようにしています。これでも足があるものとして計算するよりはいいはずです。
実際の計算例です。
下腿切断
- 下腿切断
- 60歳
- 身長170cm
- BMI22で計算
- 活動係数:1.3〜1.5
身長170cmの場合、標準体重(BMI22)は64kgです。
下腿切断のため4.5%減じると、61kgがこの方の標準体重となります。
ハリス・ベネディクトの式(Harris-Benedict Equation)にあてはめると基礎エネルギー消費量(BEE)は1381kcalになります。
これに活動係数をかけますが、活動係数は機能訓練室でのリハビリテーションだと1.3〜1.7とされています。この数字は若林秀隆先生が書かれた以下の本を参考にしています。
この患者さんの場合、回復期リハ病棟に入院した当初は活動係数1.3程度でしたが、そのうちに軽労働に相当する1.5くらいのリハビリテーションを実施するようになりました。
そのため最初に設定したカロリーは1381×1.3で1795kcal≒1800kcalでしたが、入院1ヶ月を超えたあたりから1381×1.5で2071kcal≒2000kcalにカロリーアップしました。
ちなみに2000kcalにアップしたきっかけは徐々に体重が減ってきたことに気づいたからでした(汗)。
定期的な体重の測定、とても大切です。
次は 大腿切断の場合です。
大腿切断
- 大腿切断
- 78歳
- 身長178cm
- BMI22で計算
- 活動係数:1.3〜1.5
身長178cmの場合、標準体重(BMI22)は70kgですが、大腿切断のため13%減じると、61kgがこの方の標準体重となります。
ハリス・ベネディクトの式(Harris-Benedict Equation)にあてはめると基礎エネルギー消費量(BEE)は1317kcalになります。
この方の活動係数は1.3〜1.5です。
これより適切な食事のカロリーは1712kcal〜1976kcalとなります。そのため回復期リハビリテーション病棟入院当初は1800kcalで食事を出していましたが、リハビリで汗をかくようになってきた頃から2000kcalにアップしました。
リハビリビリテーションで十分な効果を得るためには食事のカロリーは大切です。
糖尿病だからといってやたら少ないカロリーでリハビリしてはいけません。食事でしっかり栄養をとり、高すぎる血糖値は薬で治療する。
回復期リハビリテーション病棟での適切な食事量は体重をモニターしていると結構役立ちますし、断端の成熟のことを考える上での参考情報にもなりますので、週に1回程度は測定することをおすすめします。
2021年6月更新