義足と義手のリハビリテーション

切断のリハビリテーション医療

義足リハビリテーションの流れ 下腿切断の仮義足

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手術は通常、急性期病院で行われます。急性期病院というのは救急もやっているような総合病院のことです。悪性腫瘍の場合はがんセンターのような専門病院で手術が行われます。

切断原因が糖尿病、外傷、悪性腫瘍のいずれであっても、リハビリのメインは転院してからになります。

断端の傷が治って、全身状態がリハビリできるくらいまで回復したら、リハビリテーションセンターや回復期リハビリテーション病院に転院します。

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このスケジュールはあくまで一例です。

8週で退院できないことも多いですが、おおむねこの予定に合わせてリハビリを進めると2〜3ヶ月で退院できることが多いです。

はじめから12週(3ヶ月)のスケジュールを組むと、3〜4ヶ月かかる場合が増えますのでご注意ください。

この入院中に最終的に作る義足が仮義足(訓練用仮義足)です。

しかし、転院してすぐに仮義足を作るわけではありません。いきなり仮義足を作ってしまうと入院中に仮義足が合わなくなって、新しい義足を作りたいけど本義足は間に合わないという困ったことになります。

これは断端が成熟してくる(痩せる)からですが、断端の成熟についてはとても大事なことなので今後また別の記事で解説したいと思います。

そのためまずは仮義足の前に仮仮義足(適切な用語がなかったのでこう呼んでいます)を作ります。

仮仮義足の1本目ではキャストソケット(下の画像)を義肢装具士に作ってもらうことをオススメします。キャストソケットとは骨折した時に巻くプラスチックキャストを使って作るソケットのことです。

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キャストソケットは採型して陽性モデルを作らないので、義肢装具士の中には正確性に欠ける邪道なものと考える人もいるかもしれません。

たしかにこの方法では100点のソケットは作れないと思いますが、80点のソケットは作れます(義肢装具士の腕にかかっていますが)。当院の患者さんたち何十人かで実証済みです。

義肢装具士が負担するコストのことや、キャストソケットなら作ってその場で義足を装着できるメリットがあるので、まずはこのソケットで始めるのがベターです。

 

仮仮義足の2本目はチェックソケット(下の画像)義足です。チェックソケットは仮義足前に必ず作ります。

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本来は適合を確認する目的で作るソケットなのですが、リハビリにも使えるのでこれを利用してまたしばらくリハビリを続けます。

チェックソケットは義肢装具士が型を取って作るものですから、キャストソケットよりも適合のいいものが作れます。より快適に歩けるようになります。

 

そして最後に仮義足(↓の画像)を作ってもらって、約1週間それを履き込んで問題なければ入院のリハビリテーションは終了となります。

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このやり方でいくと本義足のタイミングがだいたい半年〜1年になります。退院してすぐに本義足が必要になるというトラブルを防げます。

本義足は役所に申請に行って、許可をもらって、それから義足の製作をスタートして、と数ヶ月かかることが多いのである程度長い期間を仮義足で過ごせたほうがいいです。

 

次回は急性期の義足リハビリテーションについて解説したいと思います。