義足と義手のリハビリテーション

切断のリハビリテーション医療

【義足アライメント】単純X線写真から見たスライダーの必要性

例えば内反膝や外反膝のように下肢のアライメントに変形を伴っている方で、ピンロック式の懸垂を選択される場合はスライダーというパーツを入れることをおすすめしています。

その理由の説明になるであろう単純X線写真を共有します。

f:id:gisokutogishu:20201221223913p:plain

本来シリコーンライナーはピンが脛骨の長軸と平行になるように装着します。しかし、それではなかなかピンがシャトルロックに命中しないことも多いと思います。

そのためユーザーはピンの位置を少しずらして(例えば上の写真では左側に向けて)シリコーンライナーを装着することになります。

しかし、上の写真の症例のように膝の内反変形が強いと、いくらシリコーンライナーの履き方を工夫しても限界というものがあります。

そのためスライダー(正式名称はスライド式クランプアダプター)というパーツを入れて全体のアライメントを整える必要が出てきます。

f:id:gisokutogishu:20201221233251j:plain

スライド式クランプアダプター(オットーボック)http://www.p.ottobock.jp/pdf/gisoku04.pdf

これがスライダーなしで足部を設置すると(脛骨の長軸上に足部を設置すると)足部がソケットに対して内側に来すぎてしまい、歩いたときにまったく安定しない(膝が外側に倒れる)義足となってしまいます。

スライダーを入れなくても吸着式の懸垂方法を選択することで解決できたりするのですが、このユーザーさんはまだ仮義足だったのでピンロック式にしています。断端のボリューム変化が激しい仮義足の段階では吸着式は向きません。本義足では吸着式にするつもりでいます。このあたりの話は書き出すと長くなるのでこの辺でやめておきます。

スライダーの必要性、何となく分かりましたでしょうか?

特に仮義足ではアライメントの調整がしょっちゅうだと思いますので、できるだけスライダーを入れることをおすすめします。

その方が分かりやすいですし、調整の幅が広がります。本義足に向けてアライメントを決めていくのも仮義足の役割です。

義足はアライメントの話が一番分かりづらくて難しいんじゃないかと思っています。少しでも皆さんの理解のお役に立てるといいのですが。

gisokutogishu.hatenablog.com

gisokutogishu.hatenablog.com