今はパーツの進歩もあり、あまり使われなくなった部品です。
臨床ではめったにお目にかかることはないと思いますが、リハ科医師は知っておいた方がいいかと思います。
先日、91歳の下腿切断(義足歴約70年)の男性から、腰バンド、横吊帯、大腿コルセットの組み合わせの義足を長年履いているものの不便を感じている、もっといい義足はないかと相談されました。
長年慣れ親しんだ義足を変更するのはリスキーだったりするのですが、その方はカフベルト懸垂に変更してうまくいきました。
今はパーツの進歩もあり、あまり使われなくなった部品です。
臨床ではめったにお目にかかることはないと思いますが、リハ科医師は知っておいた方がいいかと思います。
先日、91歳の下腿切断(義足歴約70年)の男性から、腰バンド、横吊帯、大腿コルセットの組み合わせの義足を長年履いているものの不便を感じている、もっといい義足はないかと相談されました。
長年慣れ親しんだ義足を変更するのはリスキーだったりするのですが、その方はカフベルト懸垂に変更してうまくいきました。
超低活動(K1レベル)の大腿切断かつ下腿切断者の義足です。
もともと左下腿切断のみだったのですが、今回、病期の進行により反対側の足が大腿切断となりました。
全身の身体機能低下が著しく、介助で立位をとらせられれば上出来というレベルでした。糖尿病の持病がありました。
右大腿義足(仮義足)はシリコーンライナーを使用し、キスキット懸垂にして、膝継手は3R31シッティングアシスト付固定膝を選択しています。
足部は1D10ダイナミックフットです。ダイナミックフットはSACH構造の足部です。これを選択した理由は足下を少しでも安定させるためです。
超低活動の両下肢切断の場合、両足でバランスを取ることが難しいので、足下がグラグラするエネルギー蓄積型足部は避けたほうがいいです。
「歩く」というより「立つ」を重視するということです。がっしり安定性がある足部にしましょう。
今回はこれが本題ではありません。
もう片方の本義足の話がメインです。
左下腿義足はだいぶ前(約4年)に作ったものだったので、入院中に役所に作り直しの申請をしました。
古い下腿義足の足部はアジャストというエネルギー蓄積型足部だったため(当時は片側の下腿切断でしたから)、これを機に右と同様、安定性重視で1D10ダイナミックフットにダウングレードすることにしました。
ところが、更生相談所からの返答はノーでした。まだ使えるからアジャストを使い続けてくださいとのことでした。
患者さんが安全に立位を取るために必要だ、身体機能が低下したためそれに合わせた足部が必要だ、といくら説明しても埒が明かず、泣く泣くソケット交換だけ認めてもらうことになりました。
また、当初カフベルト懸垂にして義足の自己装着自立を目指していましたが、リハビリをやる中で患者さんの身体機能的にそれも難しいことが分かったため、家族に義足を履かせてもらうことに方針転換しました。
それに伴い懸垂方法はピンロック懸垂にしました。ピンロック懸垂にはソケットの側壁を高くできて側方安定性を高められるというメリットがあります。
当初作り直しの許可をもらっていたソケット交換ではカフベルト懸垂にする予定だったため、作る物の方針が変わるとまた更生相談所に行かなくてはいけないと更生相談所から言われました。
現在病院では不要不急の外出は避けなければいけないことになっていますので、結局チェックソケットのまま退院し、退院後に更生相談所に行くことになりました。
このユーザーさんのように入院中に仮義足を作りながら、本義足の作り直しをする必要がある場合、役所や更生相談所とのやりとりで患者さんや医療従事者が困ることは多々あります。
超低活動者の場合、そうでない切断者と違った観点で考えなければいけないことがあります。今回の下腿義足の足部変更がそうです。
超低活動者が義足を履くというのは一昔前ではあまり考えられなかったかもしれません。しかし、最近ではこのようなケースが増えています。
更生相談所も含め義足に関わる多くの人に、身体機能や活動レベルに応じたパーツ変更がその時その時で必要になると伝えていく必要があると感じました。
私が仮義足(訓練用仮義足)でよく処方している下腿義足のシリコーンライナーを紹介します。
患者さんの状態に合わせて上の4つから選択することが多いです。
切断したての断端にはやわらかいライナーや膝を曲げやすいシリコーンライナーの方が断端に優しくていいと思います。
装着のしやすさはシリコーンライナーの自己装着が難しい人にとってメリットが大きいです。高齢者はきちんとシリコーンライナーを履くのが難しいことがあります。そういう場合は6Y75を処方しています。
義足の懸垂方法に関して高齢者や低活動者ではピンロック懸垂よりもカフベルト懸垂の方がいい場合が多々あります*1が、その場合はクッションライナーというものを使います。
基本的にデルモクッションウェーブライナーを処方していますが、指が不自由な方にはロールオンしやすい6Y75を処方します。6Y75はピンロック懸垂用ですが、ピンを外せばカフベルト懸垂でも使えます。
皮膚がとてもデリケートで傷ができやすいような場合や、指が不自由な超低活動者には6Y92コポリマーライナーを処方しています。オットーボックのコポリマーライナーはロールオンしやすい(履きやすい)ですし、デルモよりも柔らかくて皮膚に優しいです。
基本的にシリコーンライナーは柔らかいものよりも硬いものの方が義足のコントロール性はいいです。
仮義足リハで処方するライナーは断端保護効果を重視して柔らかめのものを処方していますが、高活動で断端が丈夫な方は本義足でもう少し硬めのライナーであるICEROSS® シナジーのようなものを選択してもいいと思います。
今回紹介したシリコーンライナー
低活動者用の下腿義足。仮義足の処方例です。
合併症に
があります。
処方内容は
です。
ポイントはカフベルト懸垂とクッションライナーを選択していることです。
低活動者ではしばしばキャッチピンの取り扱いが難しいことがあるので、そのような方にはカフベルト懸垂をおすすめします。
この義足のユーザーさんはT杖歩行自立、屋内ADL自立で退院されました。
義足リハにおけるレントゲン検査の活用方法を紹介します。
断端のレントゲンではなく、義足を装着した状態でのレントゲンです。
今回は下腿義足の場合です。
下腿義足を装着した状態でレントゲンを撮ると分かることが2つあります。
一つはアライメントです。
アライメントは荷重線がミクリッツ線を通るように設定するのが理想なので、レントゲンを見ることでアライメント調整の参考になります。
ミクリッツ線は以下の記事の解説が詳しいです。
(5)関節の変形と痛み | 酒井医療株式会社
もう一つは義足長です。
義足の場合、足の長さは通常、両側の上前腸骨棘もしくは腸骨翼の上縁を両手で触れることで確かめているはずです。
患者さんに「長さどうですか?」と聞いて確かめている義肢装具士や理学療法士もいるかもしれません。しかし、患者さんに聞いてみても、長さが合っているかどうか正しく判断するのは難しいです。なぜなら患者さんにとっては義足を装着するという体験が生まれて初めてのことだからです。
レントゲンを撮ると脚長差がよく分かります。
こんな一般的ではない撮影オーダをどうしているかというと、私はレントゲン技師さんに「両足に均等に荷重をかけて、靴を履いたまま、上前腸骨棘まで含めて、撮影してください」とオーダーしています。撮影には今のところ私か理学療法士が立ち会っています。
以下の写真は下腿義足の立位レントゲン写真です。この写真を見て気づくことはありますでしょうか?
上の方が切れているのでアライメントの評価はできませんね。
長さはどうでしょうか?
はい。膝の位置を見てみてください。膝の高さが違うことが分かると思います。
計測すると約1cm違いましたので、その場で1cmの差高板を入れて再度撮影したところ右の写真のように脚長差が補正されました。
この結果を元に、この方の義足は義足長を1cm延長しています。
義足リハにおけるレントゲン検査の活用法の紹介でした。参考になれば。
タイトル分かりにくくてすみません。
以下のような状況を想像してみてください。
もともと大腿義足の仮義足を1年前に作りました。
それから1年経って今度は左下腿切断術を受けることになり、両下肢切断の状態となりました。
新たに下腿義足が必要になり、下腿義足の仮義足を作るために入院してリハビリテーションを行うことになりました。
両下肢に義足を装着してリハビリを進めたいところですが、右の大腿義足(仮義足)は1年経っており合わなくなっていて、作り直しが必要な状況になってしまっています。
このような状況の時、どうすればよいのでしょうか?
入院中ではありますが、大腿義足の本義足を役所に申請するしかありません。
入院中の場合、外出が自由にできないのが困ったところです。特に新柄コロナウイルスが流行してからはできるだけ外出を自粛することが病院からも求められています。
事情を話すと、役所の担当者の方も状況を分かってくれて、都道府県に掛け合ってくれましたが、都道府県の回答は基本的に来所してもらわないと支給の許可はできませんとの返答でした。
本義足の申請とその許可は住んでいる市区町村と都道府県の二段構えで行われます。
来所してくださいと言われても両下肢切断になってしまって入院中なのに...。
今回のケースでは、身体障害者手帳を使って本義足として支給してもらうために、私が市の身体障害者福祉の担当者と話し、県の身体障害者福祉の担当とも話しました。
状況を説明し、来所できない事情を説明しました。
その結果、やっとのことでしたが、県の担当者はソケットの交換だけは書類判定で認めてくれると言ってくれました。これは例外中の例外ですよと念押し(イヤミ?)されつつ。
膝継手の交換も必要だったのでこちらも手帳で支給してほしいとお願いしましたが、それはどうしても来所しないと無理ですと言われました。
もともと3R41マニュアルロック膝継手という固定膝継手を使っていたのですが、両下肢切断になってしまったので3R31シッティングアシスト付き固定膝の方が適切になりました。身体状況が変われば必要なパーツが変わるという話はよくあることです。
しかしながら、膝継手は来所しないとどうしても支給できないとのことでした。なぜなのか理解に苦しみます。
仕方がないのでそこから考えたのが膝継手を仮義足として処方するということでした。
仮義足は治療上必要な補装具として処方することが認められているものです。
たしかに今回は下腿切断術後のリハビリテーション治療のために病院に入院しています。
リハビリテーション治療のために大腿義足の膝継手が必要だからという理由付けは通るのではないかと考えました。
その線で市の国民健康保険の担当の人と電話で話したところ、なんと、問題ないとのお返事を頂きました。
というわけで、半分諦めかけましたが今回のケースでは、大腿義足のソケット交換を手帳で、膝継手の交換を保険で実施することになりました。
本義足の支給は自治体の判断一つでユーザーが振り回されるということが起こります。今回もそんなケースの一つでした。
なかなか出くわさない特殊なケースですが、同じような状況に遭遇した方の参考になれば幸いです。