義足と義手のリハビリテーション

切断のリハビリテーション医療

断端神経腫による痛みにRPNIが有効(Shoshana L. Wooら, Plast Reconstr Surg Glob Open. 2016)

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RPNI(Regenerative Peripheral Nerve Interface)の手技(Fig. 1)。3×1×1.5cm程度の筋肉の遊離グラフトを神経の近傍もしくは離れたところから取ってきて神経を包む。総腓骨神経や坐骨神経などの太い神経は2つもしくは3つのfascicleに分けてRPNIをする(Fig. 2)。理論上は少ない軸索の方が筋肉への神経再支配が起こりやすいとされている。運動神経と感覚神経を分離する必要はない。どちらの神経でも筋肉への再支配は起こる。全ての縫合は6−0の非吸収モノフィラメントで行われた。神経上膜と筋膜(筋上膜)を2,3針縫合し、その後筋肉でくるむ。最後にグラフトの近位で神経上膜と筋肉を2針縫合する。神経はキンクさせたり、軸索を傷つけたりしないように注意する。

Methods
この研究は後ろ向きのケースシリーズである。2013年11月から2015年6月までの間に症候性の神経腫を発症し、その治療のためにRPNI手術が行われた患者が対象である。術後3ヶ月以上はフォローできたことも条件とした。最初の切断術の時にRPNIが行われた患者は除外している。

電話でのインタビューはFig3の用紙を用いて同一者が行った。PROMIS® (Patient-Reported Outcomes Measurement Information System)に基づいている。これは病気や怪我に関連したアウトカム、痛みや障害のことについて評価するのに役立つとされている。

Results
16人が対象となった。全員が切断術後の神経腫治療目的である。少なくとも術後3ヶ月はフォローされた。

平均年齢は53.5歳だった。

女性が6人(38%)で男性が10人(63%)だった。

4人(25%)が血流障害による切断だった。5人(31%)は糖尿病だった。

10人が下腿切断、4人が大腿切断、2人が前腕切断、1人が上腕切断だった。

術前に神経腫による痛みがあった期間は1年から29年間で平均6.1年だった。

16人の患者のうち17肢(上肢3、下肢4)に神経腫による痛みがあった。

46回のRPNIが行われたが、平均すると1四肢につき2.7回のRPNIが行われた。

ドナーの筋肉は外側広筋が14例、腓腹筋が11例、大腿二頭筋が10例だった。他のドナーサイトとしては大臀筋、半腱様筋、ヒラメ筋、浅指屈筋などであった。

術前に義肢を装着できていた患者は16例中9例しかいなかったが、術後は16例中13例が義肢を装着できるようになった。

16例中5例(31%)に合併症がみられた。神経腫が別の場所にできた症例が2例あった。そのうち1例は5ヶ月経った頃にRPNI手術を行い、もう1例は経過観察された。

患者へのインタビューは術後平均7.5ヶ月に行われた。10段階の数値評価では痛みは71%減少した(平均8.7点改善した)。

11例の幻肢痛を持っていた患者のうち5例は少なくとも50%の幻肢痛の改善を認めた。

9人の患者が鎮痛薬を減らすことができた。

神経腫と幻肢痛を合わせた疼痛による影響(これは生活への影響度を測るもので影響が大きいほど数値が大きい)は平均4.6点から2.15点まで改善した。

75%と大半の患者が高い満足度を示しており、94%の患者がもしこの手術が提示されるならもう一度受けたい、88%の患者がこの手術を友人に勧めたいと言っていた。

Discussion
いくつかの問題点を挙げる。

技術的な観点から、軸索と筋移植片の体積の最適な比率はまだ分かっていない。

上肢神経腫と下肢神経腫に対するRPNI手術の影響の違いをサンプル数を増やしてより詳細に評価する必要がある。

この研究では、サンプル数が少ないためか症状の持続時間と痛みの軽減との関連は認められなかった。症状の持続時間が長い患者ほど、痛みは中枢神経的な要素が大きい可能性がある。いずれにしても、患者の生活の質は改善しているようであり、薬の調整の有無に関係なく、疼痛障害のスコアが減少していることが示されている。

2人の患者は7ヶ月と8ヶ月の時点で異なる部位に新たな神経痛を発症していた。これらの新しい部位は、その部位のより強い痛みを伴う神経腫に対してRPNI治療したがために明らかになった痛みである可能性が高いと著者らは考えている。

この研究は、患者数が少なく、対照群がなく、追跡調査期間が比較的短いレトロスペクティブなケースシリーズであるという点がこの論文のLimitationである。

Conclusions
RPNIはシンプルでありながら、神経腫の痛みに効果的な手技である。大半の患者は神経腫の痛みや幻肢痛に効果を示しており、その結果に満足している。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov