義足と義手のリハビリテーション

切断のリハビリテーション医療

義手リハビリテーションで大事な2つのこと

f:id:ytanaka207:20191208130847j:plain

この記事は義手に関わる作業療法士義肢装具士、医師の方に読んでほしい記事です。
 
義手の課題の一つに、片側の上肢切断者の場合、義手の定着率が必ずしも高くないということがあります。いまだに義手は失った手の代わりになるほど十分な高い機能は備えていません。
 
義手の定着率を上げるために重要になってくるのが作業療法士(OT: Occupational Therapist)です。義手を作るだけで作業療法をやらないとか患者さんのためにならないので、本当にやめた方がいいです。
 
上肢切断の患者さんは、手を失うことが初めての経験です。もちろん義手を使ったことがあるはずもありませんし、義手なんて今まで見たことなかったという人が多いです。
 
そのため患者さんは義手を使うと何ができるのか十分には想像できません。当然です。
ここで大事になってくるのが医療サイド、すなわちOTが義手を使ったあらゆる生活動作をリハビリの中で患者さんに指導することです。
 
よくある誤ったリハビリの進め方に、
「患者さんに義手を使って何がしたいのか聞きました。」
「その話を元に、患者さんがやりたいと言った内容を患者さんと一緒にやってみることにしました。」
というような光景です。
 
僕が勤務している病院ではこのような作業療法の進め方はしないようにとOTに指導しています。
 
何がまずいかというと、患者さんの話を聞いたところまでは良いのですが、作業療法の内容がそれだけにとどまっていることです。
 
OTは義手を使ってできることを患者さんが想像するよりはるかに多くのバリエーションで患者さんに指導しなければいけません。
 
「患者さんにこんな使い方もあるよ」「あんな使い方もあるよ」これもあれもとOT側からたくさんの選択肢を提示し、その中から患者さんに使えそうな作業を選んでもらうのです。
 
そうしなければ患者さんの義手を使ってできることの幅は広がりません。
 
それからもうひとつ大事なことに患者さんに、補助手としての義手の役割を理解させるということがあります。
 
上肢の切断を受傷した場合、片側の切断であれば残った手が利き手になります。左利きの人が右手を失った場合、変わらず元々の左手が利き手。当然ですね。
 
右利きの人が右手を失った場合、これは残った左が利き手になります。なので利き手交換をしなければいけません。義手がいくら進歩したとしても残った左手には敵いません。だいたいの患者さんは義手を身に着けて義手を利き手として使いたくなります。気持ちはわかるのですが、これは違います。担当しているOTは患者さんに「そうじゃないですよ、義手は残った左手の補助として使うんですよ」と教えてあげる必要があります。この考え方は筋電義手でも能動義手でも一緒です。
 
だからいくら筋電義手ジェンガが上手くなったとしても、本質的なところで義手の使い方が上手くなったとは言えません(ジェンガは盛り上がるので、義手の認知度を上げるという意味では良い企画だと思います)。OT含め医療従事者はここを勘違いしないようにしなければいけません。
 
以上、義手のリハビリテーションで大事なことは、義手を使ったあらゆる生活動作を患者さんに経験してもらうこと、義手の補助手としての役割を理解し、その使い方を身につけてもらうことという話でした。
 
OTさんの役割について書きましたが、義肢装具士や医師も義手に関わるのであれば知っておいてほしいと思います。